本人の援助者(成年後見人など)を本人や親族の意向などを総合的に判断して裁判所が決め、この援助者が本人に代わって契約をしたり、本人がした不利益な契約を取り消したりして、本人の生活や財産を守る制度です。
本人の判断能力に応じて、次の3つの制度に分かれており、それぞれ、援助者の種類や、援助者の権限も異なります。
対象者(判断能力) |
援助者 |
|
---|---|---|
後 見 |
全くない |
成年後見人(成年後見監督人) |
保 佐 | 著しく不十分 | 保佐人(保佐監督人) |
補 助 | 不十分 | 補助人(補助監督人) |
【資格等の制限について】
これまでは、後見制度や保佐制度を利用することによって、一定の資格や職業を失ったり営業許可等が取得できなくなったりすることがありました。
しかし、下表のとおり、令和元年6月7日に成立した「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(以下「整備法」という。)」により、各資格・職種・営業許可等に必要な能力の有無については、個別的・実質的に審査して判断されたり、決定されることになりました。
施行日 | 資 格 |
---|---|
令和元年6月14日 | 准介護福祉士、養育里親及び養子縁組里親、酒類の販売業免許など |
令和元年9月14日 | 国家公務員、自衛隊員、マンション管理士、旅行業務取扱管理者、社会福祉法人の役員、宅地建物取引業の免許、建設業の許可など |
令和元年12月1日 | 一級建築士免許、二級建築士免許など |
令和元年12月14日 | 医師、介護福祉士、教員、弁護士、行政書士、警備員、税理士、地方公務員、農業協同組合の役員、貸金業の登録、古物営業の許可など |
令和3年3月1日 | 「会社法」及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」における法人の役員 ※これまで、成年被後見人と被保佐人は、役員になれませんでしたが、欠格条項が削除され、役員になることができることになりました。 ※しかし、施行日時点で、役員として、現に存在している場合、後見開始の審判を受けたときは退任することとなります(委任の終了事由に該当するため)。 一方、保佐開始の審判を受けても、当然に役員の地位を失うことはありません。 |
【選挙権について】
以前は、成年被後見人の方の選挙権は認められていませんでした。
しかし、平成25年5月に成立した「成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律」が、平成25年6月30日に施行されたことにより、平成25年7月1日以後に公示・告示される選挙については、選挙権が認められています。
成年後見人は包括的な代理権、追認権(事後の同意)、取消権を持ち、本人のために身上監護と財産管理を行います。
身上監護 |
・介護契約や福祉サービスに関する契約 ・施設入所に関する契約 ・医療に関する契約 ・要介護認定に関する手続きなど |
---|---|
財産管理 |
・定期的な収入の管理(年金など) ・定期的な支出の管理(施設費、入院費、税金や公共料金など) ・預貯金の管理(預貯金通帳の管理、預金等の出し入れ) ・自宅を含む不動産の管理 ・保険金請求 ・相続の手続きなど |
保佐人は、一定の重要な行為(民法第13条第1項の行為)について、同意権と取消権を行使して、本人の利益を守ります。
具体的には、本人がこれからする行為が本人の利益になると判断した場合には同意をします。また、本人が保佐人の同意を得ないでした行為が本人の利益になると判断した場合には事後的に同意(追認といいます)し、本人の不利益であると判断した場合には取り消します。
なお、特定の行為について代理権が付与されることもあります。
補助人は、一定の重要な行為(民法第13条第1項の行為)の一部について、「同意権・取消権」または「代理権」の一方もしくは双方を行使して、本人の利益を守ります。
大切なのは、メリットとデメリットをよく理解した上で、この制度を本当に利用する必要があるのかどうかを判断することです。
詳しい内容は、「成年後見制度にはメリットだけなく、デメリットもある」をご覧ください。